編集手帳
下の子が入試用に記事を切り取ってスクラップブックにしているそうです。
「しているそうです」と、人ごとな言い回しなのは私が知らなかったからに他なりません。
ある日、私が出張から帰って居間に座ると、バサッ、と目の前に新聞が投げられました。
んっ、と視線を上げるとそこに鬼が立っています。
私が口を開く間を与えず鬼は言います。
「何よこれ!」
訳の分からない私に鬼は新聞を指さして「これ!」と言います。
何やら新聞に宅急便の伝票が貼り付けてあるようです。
鬼はさらに言います。
「あんた、今朝出かける前に宅急便に付いてた伝票剥がしたでしょ!それがこれよ!」
思い出しました。
確かに今朝出がけに頂き物に付いていた宅急便の伝票を剥がしました。
ただ、剥がした伝票をその後どうしたかは覚えていませんでした。
でもだんだん分かってきました。
宅急便の伝票を剥いだ後、その辺に置いたつもりが新聞の上に置いてしまい、
まだ生きていた伝票の糊で新聞にくっついてしまったのでしょう。
そう理解した私は、「悪い悪い」と言いました。
でも、カミサンはまだ鬼のままです。
そして、「どこにくっつけたのよ!」と新聞を指さします。
今度は新聞を手にとって見てみました。
第一面の下の方に伝票が張り付いています。
鬼は言います。
「その場所は編集手帳が書いてある場所なの!うちの子が毎日切り取っているの!」
んー、これは見事に伝票が編集手帳の欄を隠しています。
まるで図ったかのように綺麗にその欄を覆っています。
私はあまりの見事さにおかしくなって「偶然て凄いなー」とカミサンを見上げました。
しかし、そこにある顔はまだ鬼のままでした。